CLT DESIGN AWARD 2025―設計コンテスト―は「生き生きと暮らす、高齢者のための生活拠点」をテーマに開催され、71点の応募があった。今回の応募案の特徴は、それぞれの立地の条件を配慮しながら、元気な高齢者たちが共用する空間での日常の生活を楽しみ、さらに居住する者だけでなく、地域の人々とも繋がり、交流の機会が生まれる空間の創造に力が注がれていた。しかし、その一方で「生活拠点」を求めるという表現のためか、あるいは集合住宅における「個の生活」への認識が違うためか、各人が専用する個々の住宅の快適性や相互の繋がり方に配慮した提案は少なかった。そのため、審査の評価は、専用の住宅部分の評価より、共用の生活空間の評価を重視し、CLTの使い方の発想など評価基準に基づいて評価を行った。
審査は一次審査で38点を選出し、その中から審査委員各人が10作品を選出したのち、それら選出された作品の全体を確認したのち、上位13作品について一つずつ審議を行い、再び6作品ずつを選ぶ投票を行った。続いて投票結果を見ながら、各賞にふさわしい作品を選出する審議を行い、各賞の表彰候補を決定した。この間応募者名は伏せて審査をしたが、各賞決定後学生案の上位2作品を学生賞とした。
- 農林水産大臣賞「アキナイくらし」
- 埼玉県川越市の伝統的建造物群保存地区の延長に、通りの賑わいを引き込み、高齢者の生活がいつも街と一体にあることを目指した案で、大きなCLTの壁面に土を塗るアイディアも蔵造りの街らしい提案である。
- 国土交通大臣賞「環―木・水・人がめぐる建築」
- 山梨県山中湖村の高台に大きな花畑・菜園を囲む円形の高齢者施設で、CLTパネルを斜めに切断して組み合わせた折板の円形屋根の連続と隙間を設けたインテリアの諸室の配列が美しい提案である。
- 環境大臣賞「さともり ブランチ こもれみち」
- 石川県輪島市の街中に構想し、1階は地域との交流施設及び周辺につながる通り抜けの通路を設け、2〜3階の住宅とは吹き抜けでつなぎ一体感がある。CLTパネルを斜めに切って構成する柱と梁の構造は明快。
- 日本CLT協会賞「地域に広がる木の風景」
- 埼玉県和光市郊外の公園に面した敷地で、鉄骨のフレームとCLTパネルを組み合わせてモジュール化し、運搬、建設、移設などを簡易にすると共に、モジュールを様々な用途に使うことを提案している。
- 日本CLT協会賞「木塊」
- 長野県長和町の役場や道の駅の裏手の都市計画区域外の林地でCLTの大版を部屋の断面の形に切り抜き、奥行き方向に重ねてマッシブな木の空間を創り出し、木の塊の持つ「力」を建築に活かそうとするファンタジックな提案である。
- 日本CLT協会賞 学生賞「境界に住う」
- 特定の市町を指定せず、多用途の建築が立ち並ぶ市街地で高齢者の生活拠点の塀のようなCLTの外壁に、様々な「穴(窓)」を工夫して開け、内外の隔たりをなくし、内の生活の表出と外の雰囲気の取込みを意図した提案である。
- 日本CLT協会賞 学生賞「シニア生活共感センター」
- 岡山県真庭市の住宅地で小学校に隣接し、高齢者の知恵を活かす生きた博物館として、子供や近隣居住者と共感して生きる生活施設が、合掌梁や柱とCLTパネルを組み合わせた平屋の建物が伸び伸びと広がっている。

















作品講評
本作品は、埼玉県川越市で想定されており、CLTを利用して木造の蔵造り建築の完成を目指していることが特徴である。建物自体は切り妻の形態をしており、その中間部分の共有スペースに構造を負担するCLTでつくられた大きな界壁が入れられている。この界壁はCLTで組み上げたグリッドをCLTパネルで挟む構造となっており、CLTパネルを付けた状態であれば、その壁面を利用してさまざまな造作物を取り付けることが可能で、入居者が積極的にカスタマイズすることができる。またCLTパネルを外すことで、露出したグリッドを利用して土壁の施工が可能となる。街の人々も含めて塗り壁のワークショップを実施するといった交流イベントも想定されており、地域ならではの環境との調和も意識し、将来の可変性を見込んだ提案が高く評価された。CLTをベースにした土壁はこれまでにないものであり、防火壁としての有効性も含めて、注目度の高い提案であった。