CLT DESIGN AWARD 2025 - 設計コンテスト -

CLT DESIGN AWARD 2025
- 設計コンテスト -

CLT DESIGN AWARD 2025 -設計コンテスト-」は、『いきいきと暮らす、高齢者のための生活拠点』をテーマに、CLTを活用した新しい集合住宅型の住まいの設計提案を募集いたしました。

元気な高齢者が自立した暮らしを楽しみながら、地域とつながり、安心して年齢を重ねていける住まいを構想することを求め、CLTの特性を活かした創造性と実現性を兼ね備えた提案を全国より広く募りました。

幅広い世代の方からご応募いただき、応募総数は71点となりました。

審査委員による厳正な審査の結果、大臣賞3点、日本CLT協会賞2点、日本CLT協会賞学生賞2点の入賞作品が決定いたしました。

農林水産大臣賞

No.42アキナイくらし ーCLTで蔵づくりと暮らしづくりー

津村 秀記 / 董 正 / 李 培康(FBWM architects and associates)

作品コンセプト

本提案は、地域に根ざす「商い」と高齢者の「暮らし」を重ね合わせる、新しい生活拠点の構想である。川越の蔵造り建築が抱える、施工の長期化や維持負担の重さといった課題に対し、CLTによるグリッド構造を骨格とすることで、構造体と土壁仕上げを分節化した。これにより、蔵造り特有の専門的かつ長期的な施工工程を再編し、段階的な土壁施工や竣工後の更新を可能にしている。伝統建築の魅力を歴史的建造物保存区域の内部にとどめるのではなく、周辺の街や現代の生活の中で再び機能させることを視野に入れている。建物は完成形として与えられるのではなく、CLTパネルの着脱や土壁のインストールを通して、入居者や地域住民が時間をかけて育てていく未完の建築として計画した。中庭は通り庭を現代的に再解釈した交流の軸であり、その周囲に縁側状の中間領域を設けることで、商いと居住、施設と街をゆるやかにつなぐ。CLTを単なる建材としてではなく、人と人、街と暮らし、伝統と現在を結び直す“関係の基盤”として再定義する提案である。

作品講評

本作品は、埼玉県川越市で想定されており、CLTを利用して木造の蔵造り建築の完成を目指していることが特徴である。建物自体は切り妻の形態をしており、その中間部分の共有スペースに構造を負担するCLTでつくられた大きな界壁が入れられている。この界壁はCLTで組み上げたグリッドをCLTパネルで挟む構造となっており、CLTパネルを付けた状態であれば、その壁面を利用してさまざまな造作物を取り付けることが可能で、入居者が積極的にカスタマイズすることができる。またCLTパネルを外すことで、露出したグリッドを利用して土壁の施工が可能となる。街の人々も含めて塗り壁のワークショップを実施するといった交流イベントも想定されており、地域ならではの環境との調和も意識し、将来の可変性を見込んだ提案が高く評価された。CLTをベースにした土壁はこれまでにないものであり、防火壁としての有効性も含めて、注目度の高い提案であった。

国土交通大臣賞

No.34環 ― 木・水・人がめぐる建築

池田 朋基(株式会社NAP建築設計事務所)

作品コンセプト

富士山を望む山中湖の高台に、風景と呼応するCLTの環をそっと描く。
本計画は、「木・水・人」という三つの環を建築としてかたちにする試みである。構造には、富士北麓の杉を用いたCLTを壁と折れ屋根に採用した。輸送条件を踏まえ、斜辺長さを統一したモジュールでパネルを構成することで、CLTの特性を引き出している。連なる屋根の稜線は、構造の明快さをそのまま空間の骨格とし、周囲の山並みに寄り添い、人々の多様な営みをやわらかく包み込む。
外断熱とし、室内側にCLTを現すことで、木の温もりを感じられる穏やかな室内環境をつくり出す。屋根に降る雨は大地を潤し、中央の畑を介して再び水系へと還る。環状に配置した住まいと共用空間は、住人と地域の人々の距離をやわらかく結び直し、縁側で語らう日常のなかに小さな社会の循環を育てていく。
木・水・人、三つの環が重なり合うとき、建築は資源と時間を内に抱え、人と自然がともに息づく地域の原風景を、木造建築の新たな可能性とともに未来へ立ち上げる。

作品講評

本作品は、山梨県山中湖村の湖畔に近い緑豊かな高台を想定して提案されている。圧巻は、中庭を囲んで環状に配置された建造物である。周辺に見える山並みとも調和する大屋根の下に住戸や共用施設など12の施設が配されているが、高低差のある折屋根形式のデザイン性の高さが評価のポイントとなった。この大屋根は2種類の台形のCLTと1種類の長方形のCLTによって構成されている。台形の部材は2種類のマザーボードを斜めにカットし、方向を変えて接合することでつくられるため端材が出ることはない。完成形は意匠性に富んだ外観でも、CLTによる部材の製造はシンプルで、輸送や現場施工も効率化できる点がさらに評価を高めている。アイデア次第でCLTの単純な加工と現地施工をシステム化し、魅力ある空間造像が可能であることを示す好例であり、こうした提案に触発されて、新たなシステム化の開発が進むことも期待される。

環境大臣賞

No.9さともり ブランチ こもれみち

多田 翔哉 / 山田 優輔 / 髙木 梨紗子 / 石川 天(株式会社熊谷組 設計本部)

作品コンセプト

さとやま・さとうみの故郷 ―輪島
高齢化が進行する中で震災・豪雨の被害を受けたこのまちに、安全安心な暮らしを守り、再び生まれる豊かなコミュニティを育む「さともりの建築」を提案する。
斜めカットした CLT パネルで構成される「ブランチコラム」は、枝状に張り出してスラブを直接支持するだけでなく、木立のような立姿の建築となって小さな居場所をいくつも生みだしている。
時には学童に通う子供たちが、時には出張朝市に立ち寄る地域住民がみちを介して行き交い、住まい手とつながる。
周辺の街とつながるみち、多世代をつなぐみち、いくつもの居場所をつなぐみち―
木立のような「さともりの建築」は、枝葉が木漏れ日を落とすように、ここに住まう高齢者や地域の子供たち・人々が交歓する居場所―「こもれみち」をつくる。

作品講評

本作品は、石川県輪島市を想定して計画されたもの。CLTを使用した3階建ての木造建築で、2階、3階が居住スペース、1階は共用空間として、街の人々が通り抜けできる道があり、地元の神社の参道ともつながっていることが大きな特徴である。地域社会とのつながりを意識した空間計画がなされていることと、外からも中からも木の存在感をたっぷりと感じられることが高く評価された。CLTの使い方としてはシンプルで、特に1階の共用部分では斜めにカットしたCLT版を柱と梁に採用し、力学的な整合性とデザイン的な演出を両立させた面白い空間が構成されている。こうした柱を利用して、ベンチや本棚などを設置するといった細部の工夫も注目された。特に共用部分から3階まで抜ける大きな吹き抜けは上回の圧迫感が感じられない設計がなされており、本作品の魅力を際立たせている。CLT材として能登ヒバを使う想定となっている点も注目された。

日本CLT協会賞

No.15地域に広がる木の風景
CLT とS 造のハイブリッド構造による地域拠点隣接型サービス付き高齢者賃貸住宅

横山 大貴 / 安達 慶祐 / 森 唯人 / 鹿嶋 渉 / 梅野 圭介(株式会社竹中工務店 設計部)

作品コンセプト

CLT とS 造を組み合わせたハイブリッド構造による簡易的にCLT パネルの移設や解体が可能な構造システムを提案します。
敷地に選定した埼玉県和光市は郊外住宅地として、都心部に位置しながらも県内の秩父山地は豊かな森林資源を有しています。
駅前の公園に面した郊外住宅地の一角に高齢者のライフスタイルや趣味に合わせて簡易的に移動や可変ができ、住居・店舗・集会所など様々な用途に転用可能な3 種類のユニットを用いて、県産材のCLT を活用した地域拠点隣接型の高齢者住宅を計画する。
CLT の軽量性と高強度を生かし、高齢者のための介護「施設」ではなく、高齢者が地域との繋がりを育みながら自発的に住みこなしていくことができる「生きた木の住まい」を提案することで、埼玉県内や郊外住宅地全体でのCLT の利用促進を促します。

作品講評

本作品は、高齢者の居住施設だけでなく、店舗や集会所といった入居者と街の人々が交流できる施設も併せて設置し、高齢者が地域とのつながりを自発的に育む居場所として提案されている。住戸建築や担保などの施設はすべて鉄骨造とCLTを組み合わせるハイブリッド構造でモジュール化され、設置や移設、解体、再利用が容易に行えるシステムが考案されている点が高く評価された。特に住戸建築には3階建ての集合住宅が想定されているが、準耐火構造の認定が得られるような仕様となっており、実現性の高い計画がなされていることに注目された。ハイブリッド型のモジュールはCLTを現しで使い、10tトラックで運搬可能な小さな単位で構成されているため、平面やデザインの自由度が高く、画一性を避ける計画がなされている。北欧ではこうしたモジュール化された住居の実用化が進んでおり、今後の日本の住宅事情を考えた上でも期待が持てる提案だといえる。

日本CLT協会賞

No.49木塊

藤本 翔大(of/office fujimoto)

作品コンセプト

建築の歴史において、新素材は常に新たな空間構成原理を生み出してきた。本提案では、大判木質材料CLTがもたらす新たな空間構成原理を考える。一枚のCLTから建築の断面を切り出し、それらを奥行き方向に並置することで空間を構成する。この構成による建築を「木塊:面材によるログハウス」と捉え、寒冷地における高齢者向け分棟型集合住宅を提案する。「木塊」は単一素材による原初的な構成でありながら、現代建築の多様な要求に応え、建築構成が複雑化する社会における新しい建築のあり方を提示する。

作品講評

本作品は、多数のCLT版を結合させ、一つの塊として住戸を形成していることが大きな特徴であり、その斬新さが評価された。特に注目されるのは、1枚のマザーボードから凹型、凸型の2枚を切り出すことで端材を出さず、歩留まり100%となるように想定されていること。この構造材を結合することで、効率よく千鳥型の空間を持つ住宅が完成できる点が評価された。現実にCLTを切り出す際には刃物の厚みのロスが生じることや入隅を直で取ることができないという問題があり、本作品ではオフセット型を作成して被りを確保する方法が取られている。こうした設計者の要望を叶えるためにCLTメーカーが入隅の切り抜き技術を開発するなど、新たな試みに波及することも期待された。また、本提案の主旨である木の断熱性能を生かすことに加え、大量のCLTを使用することはCO2ストレージとしての効果を期待でき、環境負荷軽減に貢献することも評価された。

日本CLT協会賞学生賞

No.63境界に住まう

石 光基(大阪大学)

作品コンセプト

現在、多くの高齢者施設では、利用者が施設内に閉じこもりがちとなり、地域住民との交流が減少している。
また、入所した瞬間から支援を受ける側として位置づけられ、主体性や役割を持ちにくい状況が生まれている。
そこで本提案では、施設と街との境界を取り払い、双方が日常的に交わることのできる環境を整える。
街と施設の境界を取り払い、日常的に地域住民と交流できる環境を整えることで、街からの生活サポートを柔軟に受けられると同時に、高齢者自身が持つ経験や技能を発揮し、地域へ貢献できる機会を創出する。これにより、高齢者が「支援される側」だけではなく、「支え合う仲間」として街と関わり、自立を継続できる場所としての新たな施設像を提示する。
CLTを用いた壁体をあえて積層的に配置することで、物理的な境界でありながらも透過性と開放性を兼ね備えた環境をつくり出す。内側から外側に向かって段階的なレイヤーを形成することで、高齢者の日常が自然と街へと滲み出し、地域との関係性が生まれる建築とする。

作品講評

本作品は、閉鎖的になりがちだった高齢者施設について、建築物の周りにCLTの壁を設けることで中間領域をつくり、外部(街)の人々との交流を促していることが特徴である。この外壁には大小さまざまな窓が開けられており、内側の暮らしの様子に対応して隠す機能と見せる機能を使い分け、街に半ば開きながら暮らすことを可能にしている。それぞれの窓には役割に応じて本棚やベンチといった家具的な小物が設置されるよう提案されているが、こうした窓の大きさや位置が自由に設定できること、厚みがあるため家具的な付属物が容易に取り付けられることなどCLTならではの特性が生かされていることが評価された。また建築物の平面プランについて、各入居者の個別スペースより全員で使用するリビングやアクティブスペースといった共有部分にゆとりを持った計画がなされており、日常的に共有スペースで過ごすよう意図されていることも注目された。

日本CLT協会賞学生賞

No.55シニア生活共感センター

鹿野田 大樹 / 高澤 政弘 / 山田 拓武(千葉大学大学院 建築学コース)

作品コンセプト

今日、多くの高齢者施設は外部との関係性を遮断し、単に高齢者が集まる場所と化している。しかし、「いきいきとした暮らし」は、ただ集まって生活することではなく、相手を思い自らの手で施し施されることにより「他者との共感」が生まれることが重要だと我々は考える。
本提案では、CLTの材質に着目する。材質ごとに異なる特徴を生活空間に落とし込むことで五感を刺激し、生活活性により他者との共感を促す生活拠点を提案する。また、高齢者を「知恵と歴史の集積人」と捉えまちに開くことにより、本施設は「生きる郷土博物館」としての機能も持つ。材質には「ヒノキ、スギ、カラマツ、トドマツ」の4つを選定し、高齢者は材質に合わせた機能の生活コアで共感を育む。生活コアはCLTパネルの特徴を活かし、施工が容易な三角形で構成し、各コア間の空間を支える構造体としても機能させることで開放的な空間を実現する。
高齢者施設の需要が高い現在から、その必要性が問われる未来に対して、CLTの可変性による機能の変化を組み込んだ高齢者施設を提案する。

作品講評

本作品は、左右2枚のCLTの大版パネルを立てかけ合ってできた三角形の空間を背骨のように連続させてチューブをつくり、その先にポスト柱だけで組んだ開放的な空間を取り付けて構成していることが特徴である。その横倒しになった三角形のチューブがX方向とY方向に伸び、生活コアや通路となっており、構造として非常に明快で現実性が高い点が評価された。象徴的な三角形の生活コアと、平板を載せて屋根とした居住空間はデザイン的に面白い。これらが分棟化されていることは防火対策にも有効であり、設計手法によっては十分成立することも評価の対象となった。また4つの生活コアで使われるCLTの材料としてヒノキ、スギ、カラマツ、トドマツの4種を使い分ける発想は新しく、注目された。香りや吸匂、遮音、防虫といった樹木の効能を生かした空間が実際にどのような印象を与えるのか、興味を惹かれる提案である。

審査委員長総評

三井所 清典

芝浦工業大学 名誉教授

CLT DESIGN AWARD 2025―設計コンテスト―は「生き生きと暮らす、高齢者のための生活拠点」をテーマに開催され、71点の応募があった。今回の応募案の特徴は、それぞれの立地の条件を配慮しながら、元気な高齢者たちが共用する空間での日常の生活を楽しみ、さらに居住する者だけでなく、地域の人々とも繋がり、交流の機会が生まれる空間の創造に力が注がれていた。しかし、その一方で「生活拠点」を求めるという表現のためか、あるいは集合住宅における「個の生活」への認識が違うためか、各人が専用する個々の住宅の快適性や相互の繋がり方に配慮した提案は少なかった。そのため、審査の評価は、専用の住宅部分の評価より、共用の生活空間の評価を重視し、CLTの使い方の発想など評価基準に基づいて評価を行った。

審査は一次審査で38点を選出し、その中から審査委員各人が10作品を選出したのち、それら選出された作品の全体を確認したのち、上位13作品について一つずつ審議を行い、再び6作品ずつを選ぶ投票を行った。続いて投票結果を見ながら、各賞にふさわしい作品を選出する審議を行い、各賞の表彰候補を決定した。この間応募者名は伏せて審査をしたが、各賞決定後学生案の上位2作品を学生賞とした。

農林水産大臣賞「アキナイくらし」
埼玉県川越市の伝統的建造物群保存地区の延長に、通りの賑わいを引き込み、高齢者の生活がいつも街と一体にあることを目指した案で、大きなCLTの壁面に土を塗るアイディアも蔵造りの街らしい提案である。
国土交通大臣賞「環―木・水・人がめぐる建築」
山梨県山中湖村の高台に大きな花畑・菜園を囲む円形の高齢者施設で、CLTパネルを斜めに切断して組み合わせた折板の円形屋根の連続と隙間を設けたインテリアの諸室の配列が美しい提案である。
環境大臣賞「さともり ブランチ こもれみち」
石川県輪島市の街中に構想し、1階は地域との交流施設及び周辺につながる通り抜けの通路を設け、2〜3階の住宅とは吹き抜けでつなぎ一体感がある。CLTパネルを斜めに切って構成する柱と梁の構造は明快。
日本CLT協会賞「地域に広がる木の風景」
埼玉県和光市郊外の公園に面した敷地で、鉄骨のフレームとCLTパネルを組み合わせてモジュール化し、運搬、建設、移設などを簡易にすると共に、モジュールを様々な用途に使うことを提案している。
日本CLT協会賞「木塊」
長野県長和町の役場や道の駅の裏手の都市計画区域外の林地でCLTの大版を部屋の断面の形に切り抜き、奥行き方向に重ねてマッシブな木の空間を創り出し、木の塊の持つ「力」を建築に活かそうとするファンタジックな提案である。
日本CLT協会賞 学生賞「境界に住う」
特定の市町を指定せず、多用途の建築が立ち並ぶ市街地で高齢者の生活拠点の塀のようなCLTの外壁に、様々な「穴(窓)」を工夫して開け、内外の隔たりをなくし、内の生活の表出と外の雰囲気の取込みを意図した提案である。
日本CLT協会賞 学生賞「シニア生活共感センター」
岡山県真庭市の住宅地で小学校に隣接し、高齢者の知恵を活かす生きた博物館として、子供や近隣居住者と共感して生きる生活施設が、合掌梁や柱とCLTパネルを組み合わせた平屋の建物が伸び伸びと広がっている。